獣医療コラム

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犬と猫の口臭について|気になる口臭、実は病気のサインかも?

愛犬や愛猫の口臭が気になったことはありませんか?実は、口臭は犬や猫の健康状態を教えてくれる重要なサインでもあります。

犬や猫の口臭は、歯周病や内臓の病気、消化器系の問題など、多岐にわたる原因によって引き起こされます。特に高齢の場合は、老化に伴う口内環境の変化や内臓の機能低下により、口臭が強くなることがあります。

今回は、犬と猫の口臭の原因、対策、予防法について詳しく説明します。

口臭の原因
犬と猫の口臭は以下のように様々な原因が考えられます。

<歯周病>
歯周病は、口臭の最も多い原因の1つです。歯垢や歯石が蓄積することで、細菌が増殖し、歯肉が炎症を起こします。これにより、口臭が発生します。
さらに歯周病が進行すると、歯が抜けたり、顎の骨が折れたりするなど、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。

<根尖膿瘍>
根尖膿瘍とは、歯の根元に膿がたまる状態を指します。根尖膿瘍が発生すると、膿の中に含まれる細菌や死んだ組織の分解物が原因で強い口臭が発生します。特に、嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)は口臭の主要な原因物質である揮発性硫黄化合物を産生し、これが強い悪臭を引き起こします。この状態になると、歯の周囲が炎症を起こし、強い痛みを伴うことが多く、患部を触れられることを嫌がるようになります。

<食べ物・口の渇き>
強い臭いがする食べ物を食べることで、口臭が発生することがあります。
また、口内の乾燥やウェットフードの摂取は、犬の口臭の原因です。口内が乾燥すると唾液の分泌量が減少します。唾液には抗菌作用があり、口腔内の細菌の増殖を抑える働きがあります。唾液の分泌が減少することで、口腔内の細菌が増殖しやすくなり、その結果として口臭が発生します。ウェットフードはその性質上、口腔内に食べかすが残りやすいという特徴があります。これらの食べかすは歯や歯茎の間に溜まりやすく、歯周病菌の栄養源となります。この結果、歯周病菌が増殖しやすくなり、これが口臭の原因となります。

<腎臓の病気>
腎臓は体内の老廃物を排出する重要な役割を担っています。腎機能が低下すると、血液中の老廃物や毒素が適切に除去されず、体内に蓄積されます。この蓄積された老廃物の一部は、肺を通じて呼気として排出されることがあり、これが口臭の原因となります。特に、尿のような臭いやアンモニアのような臭いがする場合は、尿毒症や慢性腎不全といった腎臓の病気を疑う必要があります。

<肝臓の病気>
肝臓の病気も口臭の原因となります。肝臓の機能が低下すると、体内の毒素を適切に処理できなくなり、口臭が発生することがあります。アンモニア臭が感じられることがあります。口臭がひどく、嘔吐したり、食欲不振が見られたり、歯茎が黄色っぽくなったりしている場合は特に、重い肝臓病の可能性があります。腎臓病と同様に、肝臓の問題は深刻な病気の兆候である可能性があるため、できるだけ早く獣医師の診察を受け、治療を開始することが重要です。

<糖尿病>
口臭が甘酸っぱい、またはフルーツのようなにおいがする場合、糖尿病の症状である可能性があります。糖尿病の動物では、体内でインスリンが適切に機能しないため、血糖値が上昇します。高血糖状態が続くと、ケトン体と呼ばれる物質が体内で産生され、これが呼気に甘酸っぱい、あるいはフルーツのようなにおいを与えます。ケトン体の産生は糖尿病の進行した状態である糖尿病性ケトアシドーシスの一部です。
この症状に加えて、水を飲む回数や排尿回数の増加(多飲多尿)、体重減少、食欲の変化、脱力感なども糖尿病の症状として注意が必要です。これらの症状が見られる場合は、早急に獣医師の診断と治療を受けることが重要です。

<消化器系の問題>
胃腸の機能低下や消化不良も口臭の原因となります。食道狭窄や胃内容物が食道に逆流することで食道に内容物が残り、口臭が発生することがあります。消化不良は、食物が適切に消化されないことで発生します。未消化の食物が胃や腸内に残ると、それが腐敗し、悪臭を放つガスが発生します。これらのガスは体内を巡り、呼気として排出され、口臭の原因となることがあります。

<食糞>
犬の食糞行動は、糞便中の細菌や悪臭物質を口に含み口臭を悪化させるだけでなく、口腔内の細菌叢のバランスを崩し、衛生状態の悪化を通じて、口臭の悪化を引き起こします。食糞行動自体は犬にとって一つの習性ですが、家庭での共生生活を衛生的に維持するためにはやめさせた方が良い行動です。

<老化>
年齢を重ねると口臭が強くなることがあります。唾液の分泌が減少し、口内が乾燥しやすくなるためです。老化に伴う唾液分泌の減少は、唾液腺の変性と減少、性ホルモンバランスの変化、服用している薬物の影響、さらに全身的な健康状態の変化など、複数の要因によって引き起こされます。これらの要因は相互に関連し、唾液の生成と分泌に影響を与えます。唾液が少なく乾燥した口内は細菌が増殖しやすい環境を作り、口臭の原因となります。

口臭の対策
口臭を防ぐためには、以下のような日常的なケアが重要です。

<定期的な歯磨き>
歯磨きは、口臭を予防する最も効果的な方法です。専用の歯ブラシを使って、毎日または週に数回、歯磨きを行いましょう
初めは嫌がるかもしれませんが、少しずつ慣れさせることでスムーズにケアができるようになります。

<デンタルケア用品の活用>
デンタルケアのおやつや玩具は、歯石や歯垢の蓄積を遅らせるのに役立ちます。これらは歯ブラシでの歯磨きに補助的な役割として使うことで、犬や猫が遊びながら口内を清潔に保つことができます。選ぶ際は、愛犬や愛猫の口のサイズや年齢に適したものを選びましょう。「VOHC(米国獣医口腔衛生委員会)」マークが付いている商品は歯垢・歯石に対して効果が認められた商品です。参考URL https://vohc.org/

<水分補給>
口内の乾燥を防ぎ、細菌の増殖を抑えるためには、水分補給が重要です。常に新鮮な水を用意して、愛犬や愛猫が十分な水分を摂取できるよう心がけましょう。

<定期的な健康診断(歯科検診)>
定期的な健康診断は、口臭の原因となる病気の早期発見と治療に欠かせません。
7歳以上の高齢の犬や猫の場合は、半年に1回程度の頻度で健康診断を受けるようにしましょう。

ご家庭での注意点
愛犬や愛猫の口臭を予防するためには、日常生活でのいくつかのポイントに気をつけることが大切です。
まず、食事の管理が重要です。
特に硬いものを噛むことで歯垢が落ちやすくなるため、ウェットフードよりもドライフードの方が歯周病になりにくいと言われています。また、口臭の原因となる強い臭いがする食べ物は避け、消化が良く、腸内環境を整えることを目指したバランスのとれた食事を食べさせるよう心がけましょう。

次に、毎日のスキンシップの中で、口の中の状態をチェックする習慣をつけましょう。歯や歯茎の色、口臭の有無を確認し、異常を感じたら早めに獣医師に相談することが大切です。
また、歯ブラシを使った歯磨きが難しい場合は、デンタルケア用のアイテムから徐々に慣らしていくことができます。また補助的に玩具やガムを活用すると良いでしょう。

こうした日常的なケアを続けることで、愛犬や愛猫の健康を守り、口臭の問題を未然に防ぐことができます。

まとめ
犬や猫の口臭は、健康上のサインであることが多いため、無視せずに適切な対策を講じることが大切です。定期的な歯磨きや獣医師の診察を受けることで、愛犬や愛猫の口内環境を健康に保ち、生涯にわたって快適な生活を送ることができます。

私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、愛犬や愛猫の口臭について、飼い主様の不安やお悩みに真摯に向き合い、丁寧に対応しています。
口臭は口腔内の問題だけでなく、病気の可能性も考えられます。口臭の原因や対策について、当院の獣医師が最適なケアプランをご提案し、愛犬や愛猫が健康で快適な生活を送れるように全力を尽くしています。口臭予防のための歯ブラシを使うレッスンは専属ドッグトレーナーが実施しています。
口腔ケアについて詳細な説明をご希望の方は、どうぞ気軽に当院までご相談ください。

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