歯の健康問題を理解して日常的に適切なケアを行うことで、抜歯を避けられるケースもありますが、時には抜歯が最善の選択となることもあります。とはいえ、「歯を抜く」と聞くと不安に感じる飼い主様も多いでしょう。
犬や猫の永久歯は、一度抜けると人間と同じように再び生えることはありません。抜歯後に後悔しないように、異常を感じたらすみやかに獣医師の診察を受けることが大切です。
今回は、犬猫の抜歯が必要となる具体的な理由や、術後のケアについて詳しく解説します。
抜歯が必要になる理由
犬や猫も人間と同じように、歯の問題が起こることがあります。以下のような状況で抜歯が必要になることがあります。
＜歯周病 ＞
歯周病は、歯垢や歯石が溜まり、歯肉など歯周組織に炎症を起こす病気です。
歯周病が進行して、歯を支える骨が破壊されて歯がぐらついたり、炎症による痛みや違和感が強い状態になったりすると、抜歯が必要です。歯周病は3歳以上の犬と猫の80%以上が罹患しているとも言われています。
＜歯の破折＞
硬いものをかじったり、事故で歯が折れることがあります。歯の破折があると、歯の内部に細菌が入り込み、歯髄炎や根尖膿瘍といった感染を引き起こすリスクが高くなるため、抜歯が必要になります。
＜乳歯遺残＞
子犬や子猫の乳歯が自然に抜けず、永久歯と一緒に残ってしまう状態です。
乳歯遺残があると永久歯の生え方が乱れることで、歯周病のリスクが増すため、乳歯を抜歯することが推奨されます。
＜外歯瘻（がいしろう）＞
歯根での細菌感染などにより目の下の頬の部分に穴が開いてしまっている場合は、原因となる歯を抜歯する必要があります。
抜歯をしても大丈夫？
多くの飼い主さんが「抜歯をしても大丈夫なのか？」と心配されることと思います。実際には、抜歯は、感染や痛みを軽減し、口腔内の他の歯の健康を保つために必要となる場合があります。抜歯手術は、麻酔管理が適切に行われ、術後のケアが十分になされることで、安全に実施されることが確認されています。
また、抜歯をするとご飯が食べられなくなるのでは、と心配される飼い主様も多いでしょう。犬や猫も抜歯後も適切に食事を続けることができます。抜歯後の食事に関しては、いくつかの注意点があります。
まず、食事の形態を柔らかい食事やウェットフードに切り替えることで、食べやすくなります。これにより、口腔内の痛みを軽減し、食事を楽しむことができます。さらに、食事を小さな一口サイズにカットすることで、飲み込んだ際に詰まりを予防できます。
特に口腔内の痛みを感じている場合はドライフードをペースト状にして供することが有効です。
治療方法
抜歯は全身麻酔下で行われます。その前に、隣接する歯との間に歯石がついている場合は、スケーリングで歯石を取り除き、歯全体の状態をよく確認してから最終的に抜歯が必要か判断します。スケーリングを実施している最中に獣医師が抜歯の必要性が高いと判断した場合、抜歯を実行することも少なくありません。
臼歯などの大きめの歯は、専用の器具で先に2〜3分割し、抜きやすくしてから抜歯を行います。犬歯の場合は、歯肉を切開し、抜歯後にその歯肉で抜歯した部分を覆う方法をとります。さらに、抜歯後は抗生剤を処方します。
病気の予防法やご家庭での注意点
抜歯後のケアも非常に重要です。
食事は柔らかいものに変えて、抜歯した箇所に負担をかけないようにしましょう。抜歯後の口腔ケアは、獣医師の指導に従って行ってください。
抜歯後の経過を観察し、異常があればすぐに獣医師に相談することが大切です。出血が続く、腫れがひかない、食欲がないなどの症状が見られた場合は、すぐに受診しましょう。
また、口腔環境の悪化を防ぎ、将来的に抜歯が必要にならないようにするためには、子犬や子猫の頃から歯磨きに慣れさせることが大切です。歯石が溜まらないよう、日々のお手入れに努めましょう。
そして、早期に問題を発見し、抜歯が必要になる前に適切な治療を行うためには、定期的な歯科検診を受けることが大切です。
まとめ
犬や猫の抜歯は必要に応じて行われる処置であり、安全に行われることがほとんどです。
抜歯によって痛みや苦痛が解消されると、食欲が増し、元気になるなど良い変化が見られることが多いです。
健康な歯を維持するために、愛犬や愛猫が若いうちから歯科検診を含めた、口腔ケアをしっかりと行うことが重要です。
私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、愛犬や愛猫の歯科健康にも細やかな配慮を心がけています。口腔内の健康は、全身の健康に大きな影響を与えるため、抜歯の必要性や具体的な治療方法についての相談を受け付けております。特に抜歯は、痛みや感染症を防ぐために非常に重要です。
飼い主様と一緒に最適な歯科ケアを行い、愛犬や愛猫が一日でも長く健康な生活が送れるよう、全力でサポートいたします。
抜歯についてお悩みの場合も、どうぞ気軽に当院にご相談ください。
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