スケーリングとは、動物病院で行う歯石除去処置のことです。歯垢が固まってできた歯石は、ブラッシングでは落とすことができません。放置すると歯周病の原因となり、最終的には歯を失ってしまうこともあります。また、歯周病を放置すると、歯を失うだけでなく、心臓病や腎臓病などの命に関わる病気を引き起こすこともあります。
今回はスケーリングの重要性や実際の処置方法について解説します。
スケーリングの重要性
犬や猫の口内環境は、多くの細菌が潜む場所です。これらの細菌は、食べかすや唾液とともに歯の表面に付着して、そのまま放置されると、食後数時間のうちにプラーク(歯垢)を形成し、時間経過とともに硬化して歯石へと変化します。犬や猫はプラークが歯石に変化するまでの時間が非常に短く、わずか3〜4日で歯石に変わります。
歯石が蓄積されると歯周病を引き起こし、最悪の場合には歯の喪失や顎の骨折など、重篤な健康問題を招きかねません。
これらのリスクを避け、犬や猫が健康で長生きできるようにするためには、歯周病が進行する前にスケーリングを行うことがとても重要です。
スケーリングが必要なタイミングや頻度
スケーリングの必要性はペットの年齢、品種、食事内容、口腔内の衛生状態によって異なりますが、2~3歳以上のペットでは年に1回のスケーリングが理想的とされています。
しかし、歯石が多く蓄積しやすい犬猫や、既に口腔内に問題を抱えている犬猫の場合は、頻繁にスケーリングが必要になることがあります。
スケーリングの具体的なやり方
スケーリングは通常、全身麻酔のもと行われます。これには、愛犬愛猫がストレスや痛みを感じずに治療を受けられるからです。具体的な流れは以下の通りです。
①術前検査
全身麻酔を施す前に、血液検査やX線検査、エコー検査などを行い、麻酔が安全に実施できるかを確認します。
②麻酔
獣医師が麻酔の監視を行います。
③スケーリング
超音波スケーラーを使用して歯石を除去します。
④手動工具による細部のクリーニング
超音波スケーラーだけでは除去しきれなかった歯垢や歯石を、専用の手動工具で丁寧に取り除きます。
⑤ポリッシング
歯の表面を研磨し滑らかにすることで、歯垢の再付着を防ぎます。
自宅でできる犬猫の口腔ケア方法
・歯磨き
最も効果的な口腔ケア方法は歯磨きです。犬猫用の歯ブラシと歯磨き剤を使い、毎日歯の表面だけでなく、歯と歯茎の境目を丁寧にブラッシングすることで、歯垢や歯石の蓄積を防ぎ、口臭や歯周病のリスクを低減できます。
特に、エリスリトール入りのジェルタイプの歯磨き剤はおすすめです。エリスリトールは、口の中の善玉菌と悪玉菌のバランスを整え、虫歯や歯周病の原因となる悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。
加えて、愛犬・愛猫の口のサイズに合った歯ブラシを選び、歯磨きを嫌がらないよう、優しく丁寧にブラッシングしてあげてください。最初は嫌がるかもしれませんが、短時間で終了することを心掛けて根気よく練習すれば慣れてきます。詳細は歯磨きトレーニングの記事を参照してください。
・デンタルケアトリーツやデンタルおもちゃを使う
デンタルケアトリーツやデンタルおもちゃを与えるのも効果的です。これらは、噛むことで歯垢や歯石を削り取る効果を持つものがあります。選ぶ際は、愛犬愛猫のサイズや年齢に適したものを選びましょう。「VOHC(米国獣医口腔衛生委員会)」マークが付いている商品は歯垢・歯石に対して効果が認められた商品です。参考URL https://vohc.org/
・定期的な口腔内のチェック
定期的に愛犬愛猫の口の中を覗き、歯の表面の付着物、赤み、腫れ、悪臭がないか確認しましょう。
まとめ
犬や猫は歯周病になりやすいため、定期的な歯科検診とスケーリングを行うことが大切です。ただしスケーリングは麻酔下で行う必要があるので、タイミングは獣医師に相談のうえ、愛犬・愛猫の体調に合わせて計画的に実施しましょう。また、歯科だけでなく全身の状態も定期的にチェックすることをお勧めします。
私たちエヴァーグリーンペットクリニックでのスケーリング処置には、最先端の技術と熟練した技術を駆使し、動物たちがストレスを感じることなく、また痛みを最小限に抑える方法を採用しています。
歯周病は、放置することで愛犬や愛猫の健康を脅かすだけでなく、生活の質を大きく下げる要因となります。そのため、当クリニックでは、歯周病の初期段階から適切に介入し、進行を防ぐことで、愛犬や愛猫が健康で長生きできるよう全力を尽くしています。
「スケーリングって何?」「費用は?」「麻酔は大丈夫?」そんな疑問や不安をお持ちの飼い主様、ぜひ一度当院にご相談ください。経験豊富な獣医師が、丁寧にご説明し、最適な治療プランをご提案します。
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