獣医療コラム

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犬と猫の歯磨きトレーニング┃歯磨きを怠ると重病に至るリスクが!?

犬と猫の健康において、歯磨きはとても重要です。歯磨きを怠ると、歯垢や歯石が溜まり、口臭や歯周病の原因となるだけでなく、場合によっては心臓や腎臓など全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。しかし、多くの犬や猫は歯磨きを嫌がるため、飼い主様にとっては悩みの種となることも少なくありません。

愛犬や愛猫が歯磨きを嫌がる理由は様々です。拘束されることへの不安、口周りを触られることへの恐怖、歯磨きによる痛み、歯磨きペーストの味が苦手など、それぞれに異なる原因が考えられます。

しかし、歯磨きは彼らの健康を守るために非常に重要です。ポイントを押さえたトレーニングを行うことで、歯磨きをスムーズに進め、愛犬や愛猫との信頼関係をさらに深めることも可能です。

今回は、歯磨きトレーニングの具体的な方法や注意点について詳しく解説していきます。

歯磨きの重要性
犬と猫の歯磨きは、単なる口臭対策や見た目の美しさだけではありません。実は、愛犬愛猫の健康を守るために非常に重要な習慣なのです。

​​適切に歯磨きができていないと、歯周病などの病気にかかりやすくなります。また、歯周病を放置すると、歯槽膿漏、さらには歯根膿瘍へと重症化して歯が抜け落ちたり、顎の骨が折れたり、心臓病や腎臓病などの深刻な健康問題を引き起こしたりする可能性があります

歯磨きをすることでこれらの病気を予防でき、長生きできる可能性が高くなります。

歯磨きトレーニングの具体的な方法
トレーニングの頻度は、できれば毎日行うのが理想ですが、最初は週に数回から始めて、愛犬や愛猫が慣れることを目指し、慣れてきたら徐々に頻度を上げていくことがポイントです。
次のような順番で歯磨きトレーニングを進めていきましょう。

①事前準備
ガーゼやデンタルシート、歯ブラシ、歯磨きペーストを準備しましょう。人用の歯磨きペーストは犬や猫が中毒を起こす成分であるキシリトールなどが入っていることが多いため、必ず犬猫専用歯磨きペーストを準備しましょう。

②環境を整える
愛犬や愛猫がリラックスできる静かな場所を選びます。飼い主様の膝の上にあおむけに寝かせると口の中がよく見えて磨きやすいので、膝に乗せるところから慣らしていきます。ゆっくりと仰向けの姿勢を取らせます。しっかりと体側を支えることで不安定さからくる恐怖をなくします。仰向けになる姿勢に慣れたら、次に口に手を入れる練習から始めます。仰向けにできない場合、飼い主様と同じ方向を向いて座らせる「前向き」抱きで体勢を維持します。最初は少量の歯磨きペーストを指につけ、犬や猫になめさせて指が口に入ることとペーストの味に慣れさせます。

③歯ブラシの導入
最初のうちは、歯ブラシを使う前に、指にガーゼを巻き、ゆっくりと歯と歯茎をマッサージしてみましょう。前歯から始めます。5秒程度マッサージして休憩します。順に奥歯のほうへとマッサージを進めていきます。ガーゼのマッサージに慣れたら、歯ブラシに少量の歯磨きペーストをつけて、歯を優しくブラッシングします。口の前に指が来ると嫌がる場合は、指の動きを止めておいて、動物が鼻を近づけるのを待つと良いでしょう。

④ブラッシング
歯ブラシを歯に対して垂直に持ち、小さな円を描くように優しくブラッシングします。特に重点的に磨くのは、歯石がたまりやすい上顎の奥歯の頬側です。口を閉じたままでも磨けます。 内側は、軽く口を開けてブラシを中に入れます。歯の表面だけでなく、歯と歯茎の間の歯周ポケットにブラシの毛先が入るように磨くと良いでしょう。ただし、力を入れすぎると、痛みを感じさせたり、歯肉を傷つけたりする可能性があるので注意が必要です。適切な力加減は、歯ブラシで桃の皮をこすったとしても傷がつかない程度です。嫌がる前に終えるのが鉄則で、時間にして1分以内です。

⑤ご褒美
歯磨きの後には必ず褒め、おやつを与えることで、歯磨きをポジティブな経験と結びつけます。

歯磨きを嫌がる犬と猫への対処法
犬や猫が歯磨きを嫌がる場合、ポジティブな関連付けを行うことが重要です。歯磨きが終わった後におやつを与えたり、愛犬愛猫が好む味の歯磨きペーストを取り入れたりするなどして、歯磨きの時間を楽しいものと感じさせるよう努めましょう。

特に猫の場合、短時間で終わるように心がけ、嫌がる前にやめることが大切です。
短時間でも繰り返し行うことで慣れやすくなります。
また、歯磨きを行う時間帯を一定にすることで、愛犬愛猫が日常的なルーチンとして受け入れやすくなります。

トレーニングの際に気を付けること
・無理強いは厳禁
愛犬や愛猫が嫌がっている場合は、無理強いせず、少しずつ慣らしていくことが大切です。最初は歯磨きペーストをなめさせたり、歯ブラシのにおいを嗅がせたりするなどして、嫌がらなかったら褒めることを繰り返します。つまりこれらのアイテムにポジティブな印象を持たせることが最重要です。焦らず、愛犬愛猫が慣れたことを確認してから次のステップに移るようにしてトレーニングを進めましょう

・継続することが成功への鍵
歯磨きトレーニングは、毎日少しずつでも継続することが成功の鍵です。たとえ数秒でも、歯ブラシを口に入れることに慣れさせることから始めましょう。愛犬や愛猫が嫌がらなければ、徐々に時間を延ばしていくと良いでしょう。歯磨きを「特別なこと」ではなく、「毎日の習慣」として捉えられるように、焦らずゆっくりと進めていきましょう。

・褒め言葉と愛情でモチベーションアップ
歯磨きが終わったら、おやつやおもちゃを与えたり、褒めたりして、安心させてあげましょう。愛犬愛猫にとって歯磨きが楽しい時間だったと記憶させることが大切です。

・子犬や子猫の頃から始める
子犬・子猫の頃から歯磨きトレーニングを始めることが理想です。成犬・成猫になってから始めても慣らせることができますが、子犬・子猫の時期に比べると嫌がる可能性が高くなります。

・適切な歯ブラシと歯磨きペーストを選ぶ
犬猫専用の歯ブラシと歯磨きペーストを使用しましょう。人間用の歯ブラシは素材が硬すぎて歯茎を傷つける懸念があります。人間用の歯磨きペーストは犬猫に有害な成分が含まれている場合があり、使用すると重篤な状態に陥る危険性があります。決して使わないようにしてください。

・歯磨きをするタイミング
食後30分以内が理想です。ただし愛犬・愛猫が嫌がらずに受け入れることを最優先として、1日1回は磨く時間を持つようにしましょう。

歯磨きが苦手な場合は、ドッグトレーナーと獣医師に相談する
歯磨きがどうしても苦手な場合は、ドッグトレーナーと獣医師に相談して、行動学的に理にかなった、犬と猫の習性にもとづいた無理のない方法を教えてもらいましょう。

まとめ
愛犬愛猫も、私たちと同じように、長く健康で過ごすためには、口の中の健康維持が欠かせません。特に歯周病の予防には定期的な歯磨きがとても重要であり、これにより歯肉炎や歯周炎の進行を防ぎ、全身性の疾患へ発展してしまうリスクを減少させることができます。楽しく、無理なく、ご褒美を上手に使ってトレーニングを進めることが成功の秘訣です。また、口に触れることに慣れれば、投薬の練習にも役立ちます。

私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、動物たちの健康な口腔環境の維持を目指し、歯磨きトレーニングの重要性を強調しています。
私たちは飼い主様が愛犬や愛猫の歯磨きを無理なく行えるよう、個々に合わせた歯磨きトレーニングをご提案しています。
歯磨きトレーニングがうまくいかないなど、お困りのことがあれば、お気軽に当院までご相談ください。

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