獣医療コラム

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犬と猫のマラセチア皮膚炎について|皮膚のかゆみと、ツンとした悪臭がする

マラセチア皮膚炎は、常在菌であるマラセチア菌が過剰に増えることで発生し、皮膚のベタつきや赤み、フケ、体臭のような症状を引き起こす皮膚病です。
免疫系の問題やアレルギー、内分泌系の異常、皮脂の過剰な分泌など、さまざまな要因により引き起こされます。

今回は犬と猫のマラセチア皮膚炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

原因
マラセチア皮膚炎の主な原因は、マラセチア(Malassezia pachydermatis)という酵母が過剰に増殖することです。この酵母は通常、犬や猫の皮膚に常在しており、皮脂を栄養源としています。そのため、皮脂の分泌が過剰になるとマラセチアが増殖しやすくなりますマラセチアが分泌する脂肪分解酵素や分解された脂肪酸などが表皮内へ浸透し、アレルギー反応が生じて皮膚炎が発症するリスクが高まります
出典:加納塁. Malassezia pachydermatis の update. 獣医臨床皮膚科, 2013, 19.3: 131-134.
特に皮脂の分泌が多い脂漏症を持つ犬や猫では、再発してしまうことが多くあります。

さらに、アレルギー性皮膚炎や膿皮症、ニキビダニ症、脂漏症など、他の皮膚病が皮膚の環境を悪化させ、マラセチア皮膚炎が二次的に発症することもあります。
特定の犬種や猫種には遺伝的な発症リスクが高いとされていますが、実際にはどの犬猫でも発症する可能性があります。

症状
マラセチア皮膚炎による症状には、強いかゆみ、皮膚の赤み、皮膚の肥厚、べたつき、フケの増加、脱毛、色素沈着があり、さらに特有の発酵臭のような体臭も発生することがあります。
これらの症状が見られやすいのは、アトピー性皮膚炎の症状が見られやすい部位と一致していることが多く、外耳、口の周り、足先、指間、首の内側、脇の下、お腹など局所的に現れることもあれば、全身に広がることもあります。

診断方法
マラセチア皮膚炎の診断には、皮膚掻爬(そうは)(=スクラッチ)テープストリップ(押し付け)法を用いて皮膚サンプルを採取し、顕微鏡でマラセチア菌の存在を確認します。高倍率の顕微鏡視野内に菌体が認められることが確定診断の要件です。なお、毛検査、ウッド灯検査なども同時に実施して、よく似た症状をみせる皮膚糸状菌症やニキビダニ症との鑑別を行い確定診断します。

また、皮膚の症状がアレルギー性皮膚炎、ホルモン分泌異常など他の基礎疾患によって引き起こされている可能性も考慮し、必要に応じて皮膚病理検査や血液検査などの追加検査を行うことがあります。

治療方法
マラセチア皮膚炎の治療では、抗真菌薬の使用が中心となります。薬用シャンプーや軟膏が用いられることが多く、症状が重く、全身性に広がっている場合は内服薬が処方されることもあります。併発している疾患があればその疾患の治療ももれなく実施します。

抗菌作用のある薬用シャンプーは特に効果が高いといわれており、汚れ、フケ、過剰に分泌された皮脂を洗い流して清浄にすることが目的です。ただし適度の皮脂は皮膚のバリア機能に貢献しているため、薬用シャンプーと保湿剤はセットで処方されます治療期間中は基本的には週3回のシャンプーが勧められています。

なお、シャンプー後に泡のすすぎ残し、半乾きなどがあると症状が悪化し、他の皮膚病を発症する場合がありますので、しっかりシャンプーを洗い流して、タオルで上から押さえるようにして毛の根元まで水分を拭き取り、ドライヤーで乾かすようにしましょう

予防法やご家庭での注意点
マラセチア皮膚炎の予防には、定期的な皮膚ケアが非常に重要です。
愛犬や愛猫の皮膚を常に清潔に保つこと、そして適切なシャンプーやブラッシングをこまめに行うことで、余分な皮脂や汚れが積み重なるのを防ぎ、マラセチア菌の過剰な増殖を抑制できます。

加えて、定期的な健康診断を受けて皮膚の状態をチェックし、アレルギーなどの皮膚に影響を与える可能性のある問題を早期に発見することも予防につながります

まとめ
マラセチア皮膚炎は適切な治療と予防管理を行うことで、愛犬や愛猫の生活の質を大いに向上させることが可能です。
ご家庭で皮膚の異常を感じた際はすぐに動物病院を訪れ、専門的な診断と治療を受けることをお勧めします。

私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、皮膚炎に対して、その症状の軽重に関わらず丁寧に対応しています。
当クリニックの皮膚科の獣医師が、薬物治療、特殊シャンプー、サプリメントを含む様々な治療法をご提案いたします。
自然療法を取り入れた治療オプションもありますので、愛犬や愛猫の状態に最適な治療を一緒に考えましょう。
皮膚の問題でお困りの際は、お気軽に当院にご相談ください。

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