獣医療コラム

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犬の疥癬について|犬の痒みの悩みを解消!

犬が抱える皮膚疾患の中でも、特に激しい痒みを引き起こす病気として疥癬(かいせん)があります。
この病気は愛犬の生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があり、犬だけでなく時には猫や人にも感染することがあるため、飼い主様にとっては早期の発見と適切な対応が求められます。

今回は犬の疥癬について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

原因
犬の疥癬は、主にセンコウヒゼンダニ(イヌセンコウヒゼンダニ)というダニの寄生によって引き起こされます。このダニは犬の皮膚の角質層にトンネルを掘りながら生活し、その過程で激しい痒みや痂皮形成、脱毛といった皮膚疾患を引き起こします。
ヒゼンダニ類は人や猫にも寄生して疥癬症を発症させることが知られています。また、通常のノミダニ予防薬では予防する事ができません。

イヌセンコウヒゼンダニは非常に小さく肉眼では見えないため、犬が急に痒がり始めてもすぐにその原因を特定することは難しいかもしれません。

また、ヒゼンダニは犬同士の直接的な接触、またはダニに汚染された寝具やブラシなどを介して間接的に伝播します。まれに猫や人にも感染することがありますが、人への感染は一過性の痒みを引き起こす程度ですが、抵抗力の弱い方が感染すると症状が重くなることもあります。

症状
疥癬は激しい痒みを引き起こします。この痒みのために、絶えず体を掻いたり、噛んだり、物に体を擦りつける行動が見られます
また、疥癬による痒み以外にも、以下のような症状が見られます。

脱毛:ヒゼンダニが皮膚の角質層を食べてダメージを与えることで、毛が抜けやすくなります。特にダニの寄生が激しい部位では、はっきりとした脱毛が見られることがあります。

フケ:皮膚の炎症により、フケが多く発生します。黄色い膿が乾いた痂疲がみられます。

皮膚の赤み:ダニの活動による刺激と炎症で、皮膚が赤くなります。

過角化:長期間にわたって治療されずに放置されると、皮膚が厚くなり、硬く盛り上がる過角化が生じることがあります。

二次感染:疥癬による皮膚の損傷は、細菌や真菌などの二次感染を引き起こしやすくします。特に膿皮症(皮膚の化膿性感染症)が発生することがあります。

これらの症状は、犬の耳、腹部、肘、後ろ足など、被毛の少ない部位によく現れます。疥癬の症状は犬にとって非常にストレスフルであり、放置すると全身に広がる可能性があります。これにより、犬はさらに強いストレスを感じ、食欲不振や体重減少に陥ることもあります。特に幼若期や高齢の犬の場合、激しい痒みのために栄養状態が悪化しやすいため注意が必要です。

診断方法
脱毛や痒みといった症状は他の様々な病気でも現れるため、しっかりと検査をして原因を突き止めることが重要です。
以下は、疥癬を診断するための一般的な手順です。

皮膚スクレーピング検査
疥癬の診断に最も一般的に用いられる方法は、皮膚スクレーピング検査です。この検査では、皮膚のダニの寄生が疑われる部位の表面を掻き取り、はがれたサンプルを採取します。その後、採取したサンプルは顕微鏡で観察され、ヒゼンダニ、その卵、または排泄物の有無をチェックします。

皮膚スクレーピングで採取したサンプルは顕微鏡下で詳細に調べられます。ヒゼンダニは顕微鏡下で直接観察することが可能で、虫体の発見によって疥癬の確定診断が下されます
しかし、ヒゼンダニが必ずしもすべてのスクレーピングサンプルで見つかるわけではないため、虫体や虫卵などが見当たらない、すなわち陰性の結果が出たとしても疥癬を完全に除外することはできません。そのため、激しい痒みなどの疥癬を疑う症状がある場合には、治療薬を使用してその反応を観察することで疥癬かどうかを診断(診断的治療)する場合があります。

その他の検査
ヒゼンダニが直接確認できない場合や、疥癬の症状が特徴的ではない場合は、アトピー性皮膚炎など他の皮膚疾患を除外するための追加検査が必要になることがあります。
これには血液検査、アレルギーテスト、細菌や真菌の培養検査などが含まれます。

治療方法
治療はヒゼンダニを駆除し、皮膚の症状を和らげることを目的としており、症状の重さや犬の全体的な健康状態に応じて治療方針を決めます。

まず、ヒゼンダニを効果的に駆除するためには駆虫薬の投与が効果的です。経口投与、注射、および外用薬(スポットオンタイプの薬剤やシャンプー)が含まれ、治療期間は症状の重症度により異なりますが、膿皮症が併発していなければ1~2か月程度で改善を見込めます

薬用シャンプーの使用により皮膚の炎症を和らげ、痒みを軽減することが可能です。さらに、薬用シャンプーはヒゼンダニやその卵を物理的に除去するのにも役立ちます。
疥癬による強い痒みや二次的な皮膚感染に対しては、抗炎症薬や抗生物質の投与が必要になることがあります。これらの薬剤はヒゼンダニを直接駆除するものではないものの、症状の緩和や二次感染の治療に役立ちます。

また、ヒゼンダニは飼育環境中にも存在するため、治療中は特に家庭内の清掃と消毒が非常に重要です。寝具、ブラシ、おもちゃなど、犬が頻繁に接触する物品を適切に洗浄または消毒することで、再感染のリスクを減らせます。同居する犬や猫がいる場合は、症状の有無にかかわらずその動物たちにも予防的に駆虫薬を使用します。

予防法やご家庭での注意点
疥癬は感染動物との触れ合いによって伝染するため、多くの犬が集まる場所(ドッグランやドッグカフェ、ペットホテルなど)では注意が必要です。

また、飼育環境を清潔に保つ、定期的にシャンプーをして体をきれいにする、ノミ・マダニ予防薬を投与して感染を防ぐことも大切です。予防薬には様々なタイプがありますので、犬の状況やライフスタイルに合わせて選択してください。

まとめ
疥癬は犬にとって大きなストレスとなりますが、適切な治療と予防により管理することが可能です。痒みの原因は多岐にわたるため、誤った治療を行うことで症状がかえって悪化したり長期化したりする可能性もあるため、皮膚科専門の獣医師による正確な診断が必要です。
日頃から皮膚の状態を観察し、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。

私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、愛犬の皮膚の治療にも細やかな配慮を心がけています。疥癬は、愛犬だけでなく飼い主様のご家庭にとって大きなストレス源となることがあるため、その症状の軽重にかかわらず丁寧に対応しています。
飼い主様と一緒に最適な治療計画を立て、愛犬が一日でも早く快適な生活を取り戻せるよう、全力でサポートいたします。

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