獣医療コラム

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犬猫の咳、実は心臓病のサインかも?|早期発見・治療のポイント

心臓病が進行すると心臓が肥大し、咳を引き起こすことがあります。多くの場合、咳や喘息は呼吸器系の疾患が原因だと思われがちですが、心臓病が背景にある場合も少なくありません。

今回は、心臓病によく見られる兆候としての喘息や咳の原因、その対処方法、そして予防策について解説します。

喘息や咳と心臓病の関連性
心臓の血流が滞り、心臓の大きさが増す(心肥大)ことで気管が圧迫され、咳が出やすくなります。心臓病が進行すると肺の内部に血管から体液が染み出して痰を吐くような咳が起こることがあります。
慢性的な湿った咳、特に運動後や夜間に悪化する咳は心臓病の典型的な兆候です。

咳が見られる主な心臓の病気は下記の通りです。

  • 僧帽弁閉鎖不全症: 主に小型犬に多く見られ、心臓の左側の弁が閉じなくなることで心臓への負担が増大します。
  • 三尖弁閉鎖不全症僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、右心室への負担も増え、三尖弁にも影響が及びます。
  • 拡張型心筋症心筋が薄く弱くなり、血液を効果的に全身に送り出す力が低下します。
  • 肥大型心筋症: 特に猫に見られるこの病気は、心筋が異常に厚くなることが特徴です。
  • 拘束型心筋症心筋が硬くなり、心臓がうまく収縮しなくなる病気です。
  • 肺水腫:心臓病が原因で肺に体液が溜まり、呼吸困難を引き起こします。
  • 肺高血圧症:心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇した状態のことです。僧帽弁閉鎖不全症や、肥大型心筋症などの後天性の心疾患で肺動脈圧が上昇することで、肺高血圧症になることがあります。
  • フィラリア症:蚊を介して感染し、心臓や肺の血管にフィラリアが寄生することによって引き起こされます。

診断方法
咳の原因が呼吸器系の問題に起因するのか、それとも心臓の問題によるものかを区別することは非常に重要です。正確な診断を行うために、以下の検査を行います。

  • レントゲン検査:心臓の大きさや形状、肺の状態を評価し、肺水腫やその他の異常がないか確認します。
  • 超音波検査(エコー検査):心臓の動きと構造を詳細に観察し、弁の機能不全や心筋の問題を特定します。
  • 心電図検査:心臓の電気活動を記録し、不整脈が存在するかどうかを調べます。これにより、心臓病のリスクをさらに評価できます。
  • 血液検査:心臓病に関連するバイオマーカーを含む、様々な数値をチェックします。これには、心臓ストレスや損傷を示すNT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)やトロポニンなどが含まれます。
  • 血圧検査高血圧は心臓病を引き起こす重要なリスク因子です。血圧が高い場合、それに対する適切な治療が必要となります。

これらの検査を通じて、咳の根本原因を正確に特定し、最適な治療方針を立てることが可能になります。

治療方法
心臓病による治療は病状に応じて異なりますが、主に心臓の負担を軽減し、心機能を支持するための薬物治療が用いられます。具体的には以下のような薬が処方されることがあります。

  • 強心剤心臓の収縮力を高めて血流を改善します。
  • 利尿剤余分な水分とナトリウムを排出し、心臓への負担を減らします。
  • 血管拡張剤血管を拡張させて血圧を下げ、心臓への負担を減らします。

これらの薬は、心臓の負担を軽減し、症状の管理を助けることを目的としています。また、生活習慣の改善も重要で、特に以下のような対策が推奨されます。

  • 酸素療法:必要に応じて酸素を吸入し、体内の酸素供給を確保します。
  • ナトリウム制限食塩分の摂取を控えることで、体液の貯留を防ぎ、高血圧のリスクを減らします

フィラリア症に関しては、初期段階で症状が出ていない場合、駆虫薬を定期的に服用し、体内のフィラリアを徐々に減少させます。
症状が顕著でフィラリアの寄生が大量にある場合、フィラリアを物理的に取り除く吊り出し法という手術を行います。

予防法
心臓病は症状が顕著になるまで気づきにくいことが多く、病気が進行してしまう前に発見するためには定期的な健康診断が非常に重要です。
具体的には、年1回の詳細な体格検査、聴診、レントゲン検査、心電図や超音波検査などが推奨されます。

また、フィラリア症については、駆虫薬の使用が最も効果的な予防方法の一つですが、その投与期間や頻度は地域の気候や蚊の活動期間によって異なりますので、かかりつけの獣医師と相談することが重要です。

まとめ
犬や猫の咳は、単に呼吸器の問題から生じると考えがちですが、心臓の異常が原因であることも多々あります。心臓病は、特に症状が現れ始めた頃には病状が進行しているので、早期に発見して適切な治療を行い、病気の進行を遅らせることが重要です。
咳や呼吸困難など、少しでも異常を感じたらすぐに獣医師にご相談ください。

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