獣医療コラム

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犬や猫の治療で使う漢方について|体質を改善し自然治癒力を高める

犬や猫の治療で使う漢方について

漢方医学は、古代中国から発展してきた伝統的な医学であり、「病気ではなく病人をみる」という概念のもと、人間の健康管理だけでなく動物の健康を守るためにも応用され、体全体のバランスと調和を大切にしています。
最近では、特に愛犬や愛猫の健康に対する飼い主様の意識が高まっており、その結果、自然由来で副作用が少ないとされる漢方治療への注目が高まっています。

普段よく使われる抗生剤や痛み止めは、漢方薬と対比して「西洋薬」と呼ばれます。漢方薬、西洋薬にはそれぞれのメリットがあり、どちらがより優れているというものではありません。それぞれの得意分野を組み合わせて処方することが大切です。

今回は、犬や猫のケアにおいて漢方がどのように役立つのか、利用方法や期待できる効果について解説します。

漢方治療とは

漢方薬は、植物の葉、茎、根といった自然由来の素材から抽出した生薬を組み合わせて作られた薬です。自然由来の成分を用いることで、動物の体に優しく作用し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。

漢方医学は、体内の「気」「血」「津液(体液)」の3つのバランスを整えることに重点を置いています。

  • 気:目には見えないが、体内で活動を支えるエネルギー源のようなもの
  • 血:体内を循環し、全ての組織や器官に栄養を運ぶもの
  • 津液:摂取された水分が体内を巡り、体全体を潤すもの

これらの要素がバランスよく保たれている状態を健康とし、そのバランスが崩れることで病気や不調が生じると考えられています。

漢方薬が使用されるタイミングや疾患

漢方医学は、病気の症状を和らげるだけでなく、病気の根本原因にも対処することを重視しています。
消化不良や食欲不振の改善、皮膚病の治療、関節炎や筋肉痛の緩和、さらには不安やストレスの軽減といった、多様な症状や状態に対して幅広く適用可能な治療法です。
これに加えて、免疫力の強化や全体的な健康状態の向上にも効果を発揮します。
これらの症状は、しばしば体内のバランスの乱れが原因であり、漢方治療はその内側からのバランスの回復を促し、症状の根底にある問題の解決を目指します

他にも、針灸治療の効果を高める目的、ステロイド剤の使用量を削減したい場合、がん治療の補助手段としても活用されることがあります。これらの例は、漢方が現代医療と組み合わせて使用される際に、治療効果の向上や副作用の軽減、体質改善に貢献する可能性を示しています。

動物用の漢方薬について

犬や猫に使用される漢方薬は、それぞれの動物の健康問題や体質に合わせて様々な種類があり、下記のように幅広い健康問題の改善に役立ちます。

  • 補中益気湯(ホチュウエッキトウ):消化系の問題
  • 四物湯(シモツトウ):体力の衰えや貧血
  • 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ):皮膚病やアレルギー
  • 加味逍遥散(カミショウヨウサン):ストレスや不安の軽減
  • 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):椎間板ヘルニアなどの神経根症状 など

漢方治療は、体質や現在の健康状態に合わせて細かく調整する必要があるため、専門の獣医師と十分に相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

漢方治療と西洋医学の統合

西洋医学の薬と漢方薬を組み合わせることで、西洋薬の副作用を緩和したり、必要な薬の量や種類を減らすことができる可能性があります
特に慢性的な疾患を抱える場合や、薬の副作用に対する懸念がある場合に有効で、痛みや免疫力の低下、体温の低下などの副反応を軽減または予防する効果が期待されています。
このように、漢方薬は西洋医学の補助として、治療計画に積極的に取り入れられています。

漢方を使用する際の注意点

漢方治療を動物に適用する際には、いくつかの注意点があります。まず、全ての漢方薬が全ての動物に適している訳ではないため、飼い主様が使用している漢方薬を動物に与えることは避けましょう。
漢方治療を行うにあたっては、現在の健康状態、既往症、体質などを考慮し、獣医師の指導の下で治療を行うことが必要です。

また、漢方薬は自然由来の成分を使用しているとはいえ、過剰摂取や不適切な使用は副作用を引き起こす可能性があるため、獣医師の指示に従うことが重要です。
さらに、既存の治療と漢方治療を組み合わせる場合には、相互作用による影響を避けるためにも専門の獣医師のアドバイスが不可欠です。

まとめ

漢方治療は、動物の健康管理において有効なアプローチの一つとして注目されています。特に、慢性的な病気や治療が困難な症状に対して、漢方治療は有効な補助療法となり得るとされています。
自然由来の成分を使用し、体質や個々の症状に合わせた治療を行うことで、副作用のリスクを最小限に抑えながら健康状態の改善を目指すことができます。

漢方治療の際には専門の獣医師との連携と、飼い主様の理解と協力によって大きく左右されます。愛犬、愛猫の健康と幸福を第一に考え、漢方治療を含むあらゆる選択肢を慎重に検討することが、最も重要なポイントです。


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