犬と猫の皮膚トラブルは動物病院での診療件数が多く、日常的にみられる疾患です。しかしその原因や病態は数多くあり、一口に皮膚病といっても症状や治療法は様々です。
今回は、犬と猫の皮膚病について、代表的な疾患や対策方法などをご紹介させていただきます。
監修者
獣医師・獣医学博士
茂木 千恵
共に暮らすペットの行動には、その背後に深い意味があります。行動科診療を通じて、これらの意味を理解し、問題行動の改善策を提案致します。個別カウンセリングと定期的なフォローアップで、ペットの心身の健康を見守ります。共に健やかなペットライフを実現しましょう。
皮膚病の特徴
犬や猫が皮膚病にかかると、以下のような症状がみられます。
・湿疹や赤み
・痒み
・かさぶたができる
・皮膚が乾燥する
・フケ
・毛がべたつく
・脱毛
犬や猫は全身が毛で覆われているため、細菌や真菌が増殖しやすかったり、汚れが残りやすかったりと、皮膚に問題が生じる傾向があります。
加えて、内分泌系の疾患によるホルモンのバランスの乱れが、皮膚の問題を引き起こすこともあります。皮膚の弱ったところに細菌が繁殖すると、皮膚の表面の防御機能が低下し、状態がさらに悪化する恐れがあります。
犬に多い代表的な皮膚病
・膿皮症
多くはブドウ球菌の過剰増殖が原因で、赤い発疹やかさぶた、白い膿を含んだ膿疱がみられます。
治療には、抗菌薬などの内服が行われるのが一般的ですが、抗菌薬の多用は薬剤耐性菌の出現などのリスクを高めるため、最近では薬効成分を含むシャンプー剤やローションを使用した外用療法が有効とされるようになっています。
・脂漏症
皮膚の油分のバランスが崩れることで起こります。皮脂が過剰に分泌され皮膚や毛がべたついたり臭いがでたりする場合と、むしろ油脂感のない乾燥したフケが多くみられる場合も含まれます。
特定の犬種に多く見られることが知られています。特にアメリカン・コッカー・スパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ラブラドール(ゴールデン)レトリバー、シーズー、ミニチュアダックスフンドなどに好発し、体質が大きく関係しています。また、皮脂がマラセチアというカビ菌の餌になるため、マラセチア性皮膚炎の併発がみられることもあります。
治療には、炎症や皮脂分泌を抑える薬剤、マラセチアの増殖を抑える抗真菌薬などの服薬がまず挙げられます。加えてこまめなシャンプーや薬浴と保湿など日頃のスキンケアで皮膚を清潔な状態に維持し、皮膚に柔らかさを取り戻させます。ホルモン異常などの併発疾患がある場合は投薬などの適宜治療を行います。
・アトピー性皮膚炎
おもにダニや花粉など環境中に存在するアレルゲンが原因で起こります。
強い痒みが特徴で、足先や腹部、顔などに症状が現れることが多く、赤く腫れたり毛が抜けたりします。経過が長いと患部に色素沈着が起こります。
治療には、シャンプー療法や抗生剤、ステロイド剤の内服と外用薬などを併用します。最近では炎症に関わるサイトカインのシグナル伝達を阻害する薬剤やサイトカインの産生を抑制する薬剤などが使われるようになり、掻痒のコントロールはずいぶんと進歩しています。
猫に多い代表的な皮膚病
・糸状菌症
犬や猫の被毛に糸状菌(カビの仲間)が感染することで起こる疾患です。脱毛や痒みがみられ、人間にも感染するとかゆみや炎症を起こす可能性があるため注意が必要です。
治療には、抗真菌剤の投薬や、薬用シャンプーを使って全身を清潔に保つ治療が有効です。ただし糸状菌の感染力はとても強く、ゴシゴシとあらうことで周囲に菌が広がることもあり、シャンプーや被毛のカットは獣医師と相談の上で実施することが感染拡大を防ぐためにとても大切です。また感染した動物の周囲は常に清潔にし、他の同居動物や人へ感染が伝播しないよう十分な除菌対策が必要です。
・ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に対するアレルギー反応により皮膚炎を起こします。過去にノミが吸血した際に、ノミの唾液が皮膚の中に侵入し、その成分を動物が異物とみなしてアレルギー反応が起こります。梅雨から秋季にかけて、症状がよく認められます。原因となるノミは屋外の植物の根元など湿度の高い場所に生息しており動物が近づくと飛来します。またノミに感染したほかの犬や猫との接触によっても感染します。突然の激しい痒みから始まり、掻き壊してしまうことが多く、また粟粒性皮膚炎という、赤い小さなぶつぶつがみられることがあります。
治療には、飼育環境に潜むノミを徹底的に駆除し、ノミ駆虫薬や皮膚炎に対する治療として消炎剤などの投薬を行います。
・常同障害による舐性皮膚炎
ストレスにより、同じところを舐め続けることで、脱毛や皮膚のただれがみられます。
治療は、行動診療科の獣医師のカウンセリングによって、計画的に進めます。まずは飼育環境や家族構成、同居動物との相性など、動物にストレスを与える可能性のある対象を特定し、そのストレスの軽減や除去を行い、同時に他の基礎疾患があればその治療、患部を守るためのエリザベスカラーの装着、保護服の着用、重度の場合は抗不安薬等の服用が行われます。
まとめ
皮膚病は日頃のスキンケアによる予防と、早期に原因を特定し適切な対策を行うことが大切です。日頃から愛犬愛猫の様子をよく観察し、異常を感じたらすぐに獣医師に相談しましょう。
私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、皮膚トラブルをその症状の軽重に関わらず丁寧に取り扱い、飼い主様のご希望に沿った選択肢を提供することによって、1日も早く回復し、そして長く幸せにともに暮らしていただくサポートを目指しています。サプリメント、フード、スキンケアアイテムなども皮膚科の獣医師がご提案いたします。 行動治療科ではじっくりと時間を取ってカウンセリングを実施し、治療法を提案しています。
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