獣医療コラム

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東洋医学について

餌をもらう犬

私たち人間同様、すべての犬や猫には自然治癒力が備わっており、病気や怪我をしたときには、自らの力で治そうと体が働きかけます。
このような自然治癒力を生かして体の不調を整える治療法には、東洋の伝統的な医学(東洋医学)に基づいた鍼灸や漢方、また西洋の伝統的な医学に基づいたホメオパシーやメディカルハーブ、ナチュロパシー(自然療法)などがあります。

今回は、日本でも古くから活用されている東洋医学についてご紹介します。

監修者

茂木先生

獣医師・獣医学博士

茂木 千恵

共に暮らすペットの行動には、その背後に深い意味があります。行動科診療を通じて、これらの意味を理解し、問題行動の改善策を提案致します。個別カウンセリングと定期的なフォローアップで、ペットの心身の健康を見守ります。共に健やかなペットライフを実現しましょう。

東洋医学とは

東洋医学は中国やインド、日本などの東洋とよばれる国々で、数千年の歴史を持つ東洋医療の基礎となる学問です。

東洋医療では、血液検査やレントゲン検査のような近代的な検査は行わず、問診や望診(舌の色や皮膚、表情などの観察)、聞診(呼吸の音や口・体の臭いの観察)、切診(触診)から体の不調を見つけ出し、それを整えるための治療(鍼灸や漢方など)を行います。
また、東洋医療に対し血液検査など様々な検査を行い、手術や薬で治療を行う医療は西洋医療(現代医療)とよばれています。

現代医療で診断や治療が難しい場合や、検査や治療がペットの負担になってしまう場合には、東洋医療で痛みの軽減や不調の改善を試みることができます。また最近では、東洋医療と西洋医療を併用した「統合医療」を行うことで、よりよい結果が期待されるようになりました。

東洋医学に基づいた治療法

・鍼灸

犬や猫の体表には何百個もの経穴(ツボ)があります。鍼や灸などで経穴を刺激することで、血行が促進し、その刺激が脳まで伝わるとする研究報告があります。また、脳から体表に向かう神経の末端から痛みを緩和するホルモンが放出されることが分かっています

・漢方薬

特定の植物や鉱物には、動物にとって体に効果的な働きをする成分が含まれており、それを生薬とよんでいます。漢方医学の知見にもとづいてこの生薬を2つ以上組み合わせ、より効果的になるよう調合したものが漢方薬です。 

一般的な薬は、通常1種類の合成薬効成分が含まれており、即効性はあるものの、服用する量や期間などによっては他の作用が引き起こされることが懸念されます。一方、漢方薬にはいくつもの薬効成分が含まれていますが、それぞれの生薬がはたらき合って体全体を整えていくので、目に見えている症状だけでなく、その症状の発生要因となっている体質なども整えることによって、多様な症状に効果を発揮できるとされています

・メディカルマッサージ

身体の特定の部位に対して、推拿やリンパケア、関節調整など手技や圧力を加えることで、体の経絡を刺激し、血液循環を改善し、新陳代謝を促進し、内分泌系を調節し、自律神経の機能を改善する(※)方法です。医学分野のみならず獣医学領域においても、全身性疾患の症状または局所的な不快感を除去することを目的として、臨床治療やいくつかの疾患の予防にさまざまな技術が使用されています。
※出典:Han, Y.et al. Cell Biochem Biophys 79, 895–903 (2021). https://doi.org/10.1007/s12013-021-00983-0

・その他

その他の東洋医療には、薬膳(食材や生薬を用いて作られ、特定の効果を期待するごはん)、按摩(西洋のマッサージと類似しますが、方法が若干異なります。)などがあります。

注意点

鍼灸や漢方は、体全体のバランスを総合的に診断し、調和がとれるように調整することによって効果を発揮する療法です。そのため、必ず専門的な知識を持つ獣医師の指示に従って治療を受けましょう。

まとめ

昨今では、西洋医療や東洋医療の他にも、先進の医療技術によって応用が可能となった幹細胞培養上清液などを注射して治癒を促す再生医療なども普及し、愛犬、愛猫の体質や病状に合わせた治療法を選択、併用することが可能になってきました。
私たちエヴァーグリーンペットクリニックでは、ペットの慢性疾患や高齢期、未病とよばれる不調を呈する症状などの軽重に関わらず丁寧に取り扱い、飼い主様のご希望に沿った選択肢を提供することによって、1日も早く回復し、そして長く幸せにともに暮らしていただくサポートを目指しています。当院の専門診療の獣医師までお気軽にご相談ください。


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